赤身は趣味に忠実

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マンガ『戦争は女の顔をしていない』3巻のあらすじと見どころ

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前回に続いて、『戦争は女の顔をしていない』3巻のあらすじと個人的見どころを紹介したい。3巻はパルチザンの女性と、衛生指導員の女性の話が大きく取り上げられていて、1巻2巻よりも死や血の描写が色濃い内容となっている。

2巻についての記事はこちらからどうぞ

kurururu96107.hatenablog.com

あらすじ

人間は年を取ると過去を受け入れて、去っていく準備をするとスヴェトラーナは語る。彼女たちのなかに起きたことがなにもなくなってしまうのは悔しいと思い、スヴェトラーナは大きな耳となり、人々の声を聞き、「戦争」を書き記す。

戦争に参加したことがないからこそできる「正しい見方」で見た戦争を書くために、スヴェトラーナは女性たちの心の声を汲み取っていく。

見どころ

脳にこびりつくもの

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出典『戦争は女の顔をしていない』原作:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/作画:小梅けいと/監修:速水螺施人・KADOKAWA

 

パルチザンをしていた女性・アントニーナの村はドイツ兵に占領されており、それに反抗するためにアントニーナはパルチザンとして戦うことを決意する。しかし、アントニーナの母は娘の居場所を聞くために、ゲシュタポに連行されてしまう。

ある時、ドイツ兵たちが戦地へ行くために移動しているところを、待ち伏せしていたアントニーナたちパルチザン。ドイツ兵たちは道に地雷が仕掛けられているかもしれないと村の人間たちを地雷避けとして歩かせていた。

その中にはアントニーナの母もいたが、指揮官の命令で母たちもろともドイツ兵を撃たなければいけない。アントニーナはどこを撃っているかもわからないままに引き金を引きつつ、母の安否を考えていた。

一歩間違えれば、自身の手で大事な母を手に掛けるかもしれないのに、アントニーナが戦う理由はドイツ兵への憎しみである。

彼女の村を占領していたドイツ兵は子どもを井戸に落として殺したという。アントニーナはその光景も、井戸に落ちていく子どもの声も忘れられないと語る。

落ちていく子どもの叫び声は、人の声とは思えないものとなるという。想像できるだろうか。恐怖から助けを求めて叫ぶ子どもの声や、助けてあげられない親の気持ちを考えるだけで、胸が張り裂けそうな気持ちになる。

アントニーナの母は結局ドイツ兵によって殺されて埋められてしまったため、彼女は母の遺体を掘り出して、母の遺体を洗うために水を入れた瓶を今でも取っておいているという。

そして、戦後アントニーナはドイツ兵に歩かされていた姿を、歩いている母の方へ向かってライフルを撃ったこと、若い人の声が子どもの叫び声に聞こえてしまうことに苦しまされている。

そして、戦火で焼けた人の臭いを思い出して不安になるという。

アントニーナの脳にこびりついた記憶たちは、どれも生々しく、凄惨であり、ドイツ兵の憎しみが強いものだった。前巻までは祖国防衛の意識が強いエピソードが多かっただけに、憎しみで戦ったアントニーナの話はとても胸に刺さるものとなっている。

衛生兵が見届けた死

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出典『戦争は女の顔をしていない』原作:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/作画:小梅けいと/監修:速水螺施人・KADOKAWA

 

3巻は衛生指導員をしていたタマーラという女性の話が約半分ほどを占めている。タマーラは一番恐ろしかったのはスターリングラードであると語る。

独ソ戦争におけるスターリングラード攻防戦は史上最大の市街地戦と呼ばれているもので、犠牲者や経済損失は甚大なものとなったことでも有名である。

彼女はスターリングラードの土で人の血が染み込んでいない場所はないだろうと話す。ドイツ人もロシア人も関係なく、おびただしい数の人々がそこで死んだのだ。地面を埋め尽くす死体を想像するだけでおぞましい。

300人にいた兵士たちがその日の終わりは10人ほどしか生き残っていなかったという彼女の言葉から、スターリングラード攻防戦がどれほど過酷なものであったのか感じ取れる。

そんな過酷な戦場で、眼の前で人が死んでいく人たちを見届けたタマーラは、どれだけの年月が経とうと死者の顔を忘れないという。死体は大きな口を開けていて、まるで言い残したことを叫んでいるように見える。

彼らは何を叫んでいるのか、なにを言いたいのか、想像するだけで胸が締め付けられる思いになる。

戦争後の女性の扱い

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出典『戦争は女の顔をしていない』原作:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/作画:小梅けいと/監修:速水螺施人・KADOKAWA

 

終戦後、タマーラは大尉の男性と結婚して、夫の実家へ挨拶へ向かった。タマーラは戦場において衛生指導員として負傷者の救出、手当をしていたことから英雄としての誇りがあった。

しかし、夫の実家で義妹に挨拶したタマーラは受けたのは侮蔑の言葉であったという。さらに、義母は戦場にいたタマーラが花嫁になったことにショックで涙を流して、彼女の戦友たちの写真を暖炉で燃やしてしまう。

タマーラたちは祖国防衛に努め、さらに勝利を掴み取ったというのに、この扱いはあまりにも酷である。当時に価値観では戦いは男性のものであり、女性が男性に混じり、戦場で血に濡れて、体に傷を拵えるなどはありえないことであったのだろうことがうかがえる。

2巻などにも、こういった描写はあったが、タマーラのは詳細に語られていてショックが強い。女性が女性を差別し、男性たちは差別されている女性たちを見て見ぬふりして助けなかった。

戦争中も戦後も戦ったタマーラの人生に注目してほしい。

まとめ

『戦争は女の顔をしていない』の3巻は、1人の人物の物語が長く、詳細に描かれている。パルチザンをしていたアントニーナのドイツ兵への憎しみ、脳にこびりついた残酷なこと。タマーラの死者の顔や、激しい戦いの話は、背筋がゾッとするような思いになる。

タマーラは「戦争の話は残さないといけない」と作中で言っていた。人間が人殺しの武器を持って人を殺す戦争が、どれほどおぞましいものであるのか、経験した人からしか語れないリアルは私達は知って損はないと思う。

戦争を知り、後世に伝えることで戦争を0にすることはできなくても、減らすことができればいいなと私は考えている。

余談だが、3巻を読んでいて、人間の記憶はにおいが一番強いのかもしれないと思った。アントニーナは人間の焼ける臭いが、タマーラは血の臭いが忘れられないと語っていた。香水を嗅いでも何をしても臭いの記憶は消えないという。

私も昔に嗅いだ嫌な臭いが忘れられない。似たような臭いを嗅ぐと、嫌なことを思い出す。臭いの記憶は興味深いものとなっているように思った。

 

猫好きな子ども・大人におすすめの猫の絵本4選

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子どもを産んでから買うようになったもののひとつに絵本がある。赤ちゃんの頃はオノマトペの絵本をよく買っていたが、猫を飼っていることと私が猫好きなことが影響して猫の絵本を選ぶようになった。

子どもも猫が好きで、そこそこ増えてきたのでおすすめの猫の絵本を布教したいと思う。

大人でも楽しめる絵本をチョイスしたので、猫好きな大人にもおすすめものとなっている。

猫好きにおすすめの絵本

ネコヅメのよる

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出典:『ネコヅメのよる』©町田尚子/岩崎書店

『ネコヅメのよる』は岩崎書店から発行されている町田尚子先生の作品。

とある夜に、たくさんの猫たちが集まって夜空に浮かぶとある物を見に行く話となっている。

主人公の猫は町田先生の飼っていらっしゃる猫がモデルとのことで、とてもリアルな猫の可愛さが描かれている。内容も、猫の持つミステリアスな雰囲気を存分に使っていて、人目のない夜の猫の行動が面白い!

よく、空き地や公園などで猫が集まっているのを見かけては、「あ、猫の集会だ」とか思って見ていたけれど、本当はコレを見るために集まっていたのかなと思わせてくれて、読んだあとも楽しめる。

たくさんの猫達が集まっているシーンは多種多様な柄の猫たちが描かれていて、大変眼福!

私のお気に入りシーンは主人公猫の顔のドアップ。

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出典:『ネコヅメのよる』©町田尚子/岩崎書店

全体的に気持ちよさそうな毛並みとひげ袋のふわふわ感、透き通った瞳が本当に可愛くてツボ。鼻と口の下の部分がうっすらピンク色なのもポイントが高い!

夜の猫が何をしているのか、気になる人におすすめ!

ねことねこ

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出典:『ねことねこ』©町田尚子/こぐま社

『ねことねこ』はこぐま社から発行されている町田尚子先生の作品。

『ネコヅメのよる』と同じ作者で、猫の絵がリアルテイストで、とても可愛いものとなっている。

ストーリー性はなく、同じページに描かれた猫たちの同じところを探したり、兄弟猫の模様を見比べたりと、見て楽しむ絵本となっている。

尻尾が長い猫や短い猫、眉毛みたいな模様の猫や、足の裏が黒い猫など猫好きなら一匹はツボにハマる子がいると思う。

私のお気に入りは足に裏が真っ黒な子!肉球も黒いとなおよし!

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出典:『ねことねこ』©町田尚子/こぐま社

どんな足の裏も可愛いのだけれど、私は真っ黒な子に心を乱されてしまう!

うちの子も足の裏真っ黒子なので、愛でております。

ストーリー性がないから、小さな子どもでも楽しめるので赤ちゃんにもおすすめ!

ねこのラーメンやさん

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出典:『ねこのラーメンやさん』©KORIRI/金の星社

『ねこのラーメンやさん』は金の星社から発行されているKORIRI先生の作品。

町で人気のラーメン屋さんの店長・マオさんがラーメンスープの仕込みをしたり、ラーメンを作ったりする話となっている。

ストーリーもマオさんのコミカルな性格やラーメンをなかなか食べようとしないお客さんの猫あるあるな描写が面白く、かつおぶしラーメンが美味しそうで読んでいてお腹が減ってしまう!

そして、たまらないのが猫の顔!!もちっとした頬、髭袋、顎、なにより首周りのもちもちが最高なのだ!

ほっぺたをたぷたぷと下から持ち上げたくなるようなデザインで、とても癒やされる…。そして、へちゃむくれというのか、顔のパーツがむちょっとなっているのも可愛い。

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出典:『ねこのラーメンやさん』©KORIRI/金の星社

背景の作画からもこだわりが感じらるので、小物ひとつひとつもきちんと見て欲しい作品。

猫とラーメンが好きな人はハマること間違いなし!

どろうぼうねこのおやぶんさん

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出典:『どろぼうねこのおやぶんさん』©文・小松甲尚、絵・かのうかりん/文芸社

『どろぼうねこのおやぶんさん』は文芸社から発行されている文・小松甲尚先生、絵・かのうかりん先生の作品。

とある商店街のさかな屋さんの常連であるどろぼうねこのおやぶんさんは、天気予報からの情報で、住んでいる街にさんまやサバが降ってくることを知る。さかな屋さんは空から魚が降ってきては商売にならないと悩み、どろぼうねこのおやぶんさんに相談するが…?

やわらかい絵で展開される、ちょっぴりファンタジーな内容に癒やされる作品となっている。

とにかくどろぼうねこおやぶんさんが可愛い!おやぶんというだけあって、凛々しい顔つきで、手足もがっしりと太くて、毛並みもほわほわで「親分!」という雰囲気がたまらない!

子分たちもみんな治安の悪い顔をしていて、人相(猫相?)の悪い子が好きな人には刺さると思う。

私のお気に入りは親分さんのきんちゃまが映っているところ。

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出典:『どろぼうねこのおやぶんさん』©文・小松甲尚、絵・かのうかりん/文芸社

のきんちゃまは至高なのです。

ストーリー性がある内容なので、ある程度理解ができるようになる2歳以降の子どもにおすすめ!

まとめ

リアルテイストな猫の絵が好きで、思わずもふりたくなってしまうものを買ってしまう。

ねこのおやぶんは家で買っている猫のおじいちゃん猫に顔や柄がそっくりで、思わず笑ってしまった。

飼っている子や身近な子にそっくりな猫が出ると、なんだか嬉しくなってしまうのは、あるあるだと勝手に思っている。

猫好きなら読んで楽しめると思うので、機会があれば読んでみてほしい。癒やされること間違いなし。

子どもが歯磨きを嫌がるので『ポケモン』で解決した話

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小さな子どもというのは、だいたい歯磨きが嫌いである。私も小さな頃、歯磨きが好きではなかった。歯茎をゴシゴシされるのがなんとなく不快だし、頭をガッチリ拘束されるのも嫌だった。

そして、我が家の子どもも、例に漏れず歯磨きイヤイヤの時期が来た。これには困った。

嫌がる中で拘束してやるのも、余計に嫌がる要素になるだろうし、大泣き声を聞きながらやるのもこっちのメンタルに負担がかかる。

「どうしたもんか」と考えていた頃に、私は思い出した。以前見かけた歯磨きアプリの『ポケモンスマイル』というアプリの存在を。

今回は、ポケモン好きの子どもならばウケること間違いなしの、『ポケモンスマイル』について紹介したい。

子どもの歯磨きイヤイヤ問題は、よく聞く話題なのでお困りの人の助けになれば幸い。

 

ポケモンスマイル』とは

出典:『ポケモンスマイル』公式サイト

 

ポケモンスマイル』は歯磨きをサポートしてくれる歯磨きアプリのこと。歯磨きをしっかりと頑張るとポケモンをゲットできる仕組みで、子どもの歯磨きへのモチベーションを上げやすい作りになっている。

アプリは無料で、課金要素は一切なしという超良心的アプリになっていて嬉しい!

イラストは人気イラストレーター・カナヘイさんが手掛けていて、程よいゆるっとしたポケモンたちが可愛くて、子どもウケも良い。

ポケモンは約250匹もいるので、長く楽しめること間違いなし!

子どもの反応と使ってみた感触

出典:『ポケモンスマイル』公式サイト

1回の歯磨き時間は1分、2分、3分と選べるので、子どもの集中できる時間に合わせて設定できるのが嬉しい。(磨いている途中で飽きてぽいっとされるのが地味に面倒なので)

我が家は今年4歳になる子どもで、今は2分で磨いている。飽きることなく、楽しそうにゴシゴシと頑張ってくれている。

歯磨き中はインカメで自分を写しながら磨くのだけれど、ゲーム内アイテムのキャップを自分で選んでかぶれるので、毎回気分を変えることできる。

うちの子のお気に入りはコイキングの帽子。うまく磨けていないと食べられてしまうので、頑張ってゴシゴシして食べられるのを回避している姿が可愛い。

歯磨きの終盤に差し掛かると虫歯菌で隠されたポケモンが現れるので、歯磨きに連動したピカチュウの攻撃で虫歯菌をやっけるのだが、磨き方が足りないと捕まえられない。うちの子は一度逃してしまったことがあって悔しかったのか、以降はきちんと歯ブラシを動かすようになったので、ダラダラ磨きを防止できるのも個人的にポイントが高いと思う。

ポケモンスマイル』を導入するまでは、雰囲気を変えるためにお風呂の時間にやってみたり、なだめすかしたり、おもちゃで釣ってみたりと悪戦苦闘していた。

歯磨きをするだけなのに30分ももたもたしていられるほど親も暇ではないし、こっちがイライラしてきて空気が悪くなることもザラだった。

ポケモンスマイル』を見せてからは元々ポケモン好きだったこともあって、すんなり歯磨きをやるようになってくれて嬉しかった。

ポケモンが好きな子でも、ポケモンを知らない子でも楽しめるような工夫がいっぱい詰め込まれたアプリなので、歯磨きイヤイヤな子にぜひ一度試してほしい!

歯磨き時間が楽しめるようになると自然と習慣化されるので、いちいち「早く歯磨きすましちゃいなさい!」とか言わなくて済むのは、地味にでかい(笑)

歯磨きが終わると、歯磨き中の顔写真をアプリ側が4枚ピックアップしれくれて、そのなかから1枚選んで保存できる。

さらに、選んだ写真はスタンプなどでデコれるので最後まで子どもは楽しめるし、親は可愛い子どもの写真を保存できるしで最高の機能!

ポケモンスマイル』の難点

全体的によくできたアプリで、バグもないし図鑑埋めも楽しいのだけれど、一個だけ難点がある。

それは、最新のポケモンが出ないこと!

たとえば、今大人気のニャオハやクワッス、ホゲータなどが、実装されていないのだ。

なので、最新のポケモンを集めたいという子の場合は少し物足りないかもしれない。しかし、イーブイヒノアラシなど今も人気のポケモンもいっぱい出るので、一定は楽しめると思う。

まとめ

乳歯は虫歯ができやすいし、子どものためにも虫歯にはさせたくないのが親心だけれど、子どもが小さいとそれが伝わらないのが辛いところ。

あの手この手でうまいこと子どもを乗せていくのが、本当大変だからこそ、こういったアプリの存在が本当に嬉しい。

しまじろうとかも子供受けいいのだけれど、やっぱり年齢を重ねると興味をなくされてしまうが、ポケモンなら年齢を選ばないから飽きられにくいのも良いポイントだと思う。

もし、子どもの歯磨きイヤイヤで困っているのであれば、試してほしい。

アプリ自体も軽いから、ダウンロードもさっくり終わって起動も挙動もサクサクしているから、本当におすすめ!

↓公式サイトのこちらからダウンロード可能↓

www.pokemon-smile.jp

 

 

マンガ『戦争は女の顔をしていない』2巻のあらすじと見どころ

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前回に引き続き、『戦争は女の顔をしていない』の2巻のあらすじと見どころについて書いていこう。2巻目を買おうか迷っている人の手助けになれば嬉しい。

2巻は原作者のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏が『戦争は女の顔をしていない』を書くに至った理由が描かれてて、興味深い内容となっている。

前回の『戦争は女の顔をしていない』1巻はこちらからどうぞ

kurururu96107.hatenablog.com

 

あらすじ

スヴェトラーナは子供の頃から本好きだったが、戦争ものは嫌いであった。しかし、スヴェトラーナの住んでいた村は戦争により男性がおらず、村の女性達は戦争の話をよくしていた。やがてスヴェトラーナは、祖母や村の女性たちから聞いた戦争を外に伝える方法を模索するようになる。

そして、従軍女性にインタビューしたものをまとめることを思いつく。スヴェトラーナのインタビューによって様々な女性たちから、女性でありながら戦争に参加した理由が語られていく。

見どころ

人間のスケールが戦争を超える

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出典『戦争は女の顔をしていない』原作:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/作画:小梅けいと/監修:速水螺施人・KADOKAWA

スヴェトラーナは幼い頃から本が好きであったが、「戦争もの」は嫌いであったという。そんな彼女が「戦争」について書こうと思ったのは、その子ども時代の経験がきっかけであった。

彼女が生まれたとき、村には女性しかおらず、「戦争」は子どもたちの間で遊びのコンテンツとして扱われていた。スヴェトラーナは「戦争」というものがどういうものなのか、解き明かしたいと考えるようになった。

そして、祖母が語った村にある畑は戦後もなかなか何も生えてこなかったと言い、さらにその畑で戦闘があったあとは死体まみれであったことをスヴェトラーナに語った。

祖母の話も、畑の光景も彼女のなかに強く残り、自身が見聞きした「戦争」を伝える術を模索していく。そして、ついにその術を見つけた。

スヴェトラーナは従軍女性たちにインタビューをするなかで、戦争のスケールと人間のスケールについて考えることになる。

スヴェトラーナの「人間は戦争よりずっと大きい」というセリフは、本作を読むにあたって様々なことを考えさせてくれるものとなっている。

戦争は悲惨であることはみんなが知っていることであるが、ではそこに参加している人間はどうだろうか。

とある女性は道いっぱいに転がっているドイツ兵の死体の上を馬車で通ったときに、頭蓋骨が折れる音が聞こえて、嬉しかったと語っていた。こういった、人間の中にある残虐性が戦争の悲惨さを超えたとき、人間のスケールは戦争を超えるのかもしれない。

どういったときに、人間は戦争の大きさを越してしまうのか。これを念頭において1巻を読み直してみるのもいいと思う。

女の子たちの間にあった「祖国防衛」という意識

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出典『戦争は女の顔をしていない』原作:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/作画:小梅けいと/監修:速水螺施人・KADOKAWA

1巻に登場した狙撃兵のマリヤが戦争に参加するきっかけについて描かれた。マリヤはどこにでもいる平凡な少女であったが、ドイツのソ連侵攻をきっかけに、変わっていくことになる。

戦争が始まると村の男達は戦争へ向かい、残されたマリヤや他の女の子たちのなかに長引く戦争に対して「前線にでなければいけない」という空気が生まれた。

マリヤたちは徴兵司令部にて基礎の訓練を受けて、モスクワにドイツ兵が進行してきたと聞いて、「祖国防衛」のために立ち上がる。

そして、前線行きが決まり、マリヤたちは意気軒昂といった様子で、前線へ向かった。

独ソ戦争の始まりは、ヒトラーソ連の良質な土地を欲しがったことと、ソ連壊滅を狙ったことによるものである。ドイツに負けてしまえば、土地は取られ、民族は滅ぼされてしまう。

そのような状況下であれば、性別関係なく自分の国を守ろうと立ち上がるのは自然なことだろう。なにより彼女たちは若かった。

若いということはまだ様々なことへの経験が浅く、頭でわかっているだけなんてざらである。そんな彼女たちが持った「祖国防衛」の意識の先にあったものに注目してほしい。

1人の中にある2つの真実

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出典『戦争は女の顔をしていない』原作:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/作画:小梅けいと/監修:速水螺施人・KADOKAWA

ニーナという女性は、自身が戦争の参加するきっかけや、衛生指導員として負傷者を助け出したこと、女の子の新兵だったためにからかわれたこと、一緒に来ていた友人たちの最期などたくさんの話をしてくれた。

しかし、ニーナはスヴェトラーナがインタビューを元に書いた原稿の大半を添削して、削った。上官にからかわれた話、新兵だったころの失敗談、男性中尉に言い寄られたことなどの話を、なぜ書いたのかと言わんばかりに、原稿の文字に横線が引かれている。

ニーナは戦争で戦った勇敢な女性兵士で、息子たちからみたら英雄であり、自身も従軍して戦ったことを誇りに思っている。

そのため、赤裸々に書かれた人間味のある彼女の姿は、理想の英雄像から離れてしまうのだろう。

心の奥底にある彼女たちの真実と、他者から見る英雄としての彼女たちの真実。1人の中にある2つの真実というのは、とても印象深く、そして興味深かいものとなっている。

まとめ

『戦争は女の顔をしていない』の1巻は従軍女性の話にスポットを当てたものとなっていたが、2巻ではスヴェトラーナについても触れられていて、彼女のインタビューした人たちへの考えが描かれていて、とても面白い巻である。

1巻に負けず劣らずのできなので、読んで損はない作品だと思う。

ゲーム『歪みの国のアリス』のあらすじとおすすめポイント

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今回布教したいのは、ゲーム『歪みの国のアリス』。ナイトメアプロジェクトから配信されているホラーADVで、選択肢によってストーリーが分岐するマルチエンディング採用のゲーム。

元々はガラケーの買い切りアプリとして配信開始されたゲームなのだが、コアなファンが多いことからスマホ版、Switch版、さらには小説、児童文庫と定期的に公式供給があるありがたい作品だ。

タイトルの通り、『不思議の国のアリス』がベースになっており、登場キャラの名前も本家に習ったものがいる。

ホラーであるが、幽霊ものではなく、グロテスク系(血・切断など)で、精神的なトラウマを扱っている。

またコミカルなシーンが多く、笑って泣けるホラーゲームとしてファンに愛されている。

歪みの国のアリス』のあらすじと私が個人的におすすめなだと思うポイントをまとめてみた。

 

歪みの国のアリス』のあらすじ

放課後の教室で目覚めた主人公・葛木亜莉子は、眼の前に突如現れた灰色のフードの男の・チェシャ猫に話しかけられる。

チェシャ猫は亜莉子のことをアリスと呼び、「さぁ、シロウサギを追いかけよう」と言う。

この出会いをきっかけに歪みの国に飲み込まれて、亜莉子はアリスとして、シロウサギの行方を追う。

シロウサギの正体とは。そして、その先に待つ真実とは…。

歪みの国のアリス』のおすすめポイント

愛しさと恐怖を持ったキャラ

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出典:『歪みの国のアリス〜リコレクション〜』©NightmareSTUDIO

本作に登場するキャラたちは見た目のインパクトが強い。アリスと行動をともにチェシャ猫は、灰色のフード、三日月型の口と猫の要素がほぼない。

最初はその外見から不気味さを感じてしまうが、ストーリーを進めるうちに、チェシャ猫なしでは生きられない体にされてしまう。

いざというときには助けてくれて、恐ろしい目にあってもそばにいてくれる存在はとても大きい。そして、たまに見える猫の仕草に愛おしさを感じてくる。

こういった、どこか見た目が不気味でも、性格や行動に可愛らしさを感じるデザインが魅力的なキャラが複数出てくる。

そして、見た目が可愛くとも行動が可愛くないキャラが居るのも、メリハリがあって大変良い。

ちょっと変わったデザインが好きな人には刺さると思う。

コミカルな中にある恐怖

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出典:『歪みの国のアリス〜リコレクション〜』©NightmareSTUDIO

主人公のアリス(亜莉子)はツッコミ気質な性格であるため、歪みの国で起きる常識外れなことにどんどんツッコミを入れていく。

そのため、アリスのツッコミによるコミカルなシーンが多く存在する。

しかし、締める部分はぎゅっと締め過ぎなくらい締めてくれるので、ストーリーに絶妙な緩急が生まれて、グイグイ引き込まれていく。

アリスのコミカルなシーンで笑っていたら、突然血みどろな展開になったりする。特に前半はこういった流れが多い。後半になるとじんわりと侵食してくる狂気的なホラーを味わえる。

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出典:『歪みの国のアリス〜リコレクション〜』©NightmareSTUDIO

ホラーが苦手という人でもアリスの性格のお陰でプレイできたという声もあったりしたので、ホラーが苦手な人にも楽しめるストーリーになっている。

私はホラー大好きで、ただ怖いだけというのも好きだ。しかし、たまに気が抜ける方が、ホラー演出が来たときにより怖い思いをできると思っている。

アリスの抱えるトラウマ

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出典:『歪みの国のアリス〜リコレクション〜』©NightmareSTUDIO

ストーリーを進めていくと、アリスがなぜ歪みの国で真実を探すことになるのかが明かされていく。その過程で描かれるアリスの過去は壮絶なものとなっている。

父の死をきっかけに壊れてしまった母。そのなかで、必死に求めた愛情。その結末は、凄惨極まりないもので、アリスの心情を思えば思うほど切なくなってしまう。

子供の頃にプレイしていて、本当にきつかったのを覚えている。特にアリスの「私はおかあさんに殺されるような惨めな子じゃない」という台詞が印象的だった。

大人になってプレイしなおしても、この台詞でメンタルがやられてしまうのだが、個人的に泣ける場所だと思うのでおすすめポイントとして紹介する。

複数の視点で見る真実

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出典:『歪みの国のアリス〜リコレクション〜』©NightmareSTUDIO

歪みの国のアリス』はマルチエンディングが形式になっていて、ノーマルエンドが10個、トゥルーエンドが5個の計15個が用意されている。

ノーマルエンドはアリスが自身の中の真実を知ることを拒否すると辿りつき、死亡、もしくは精神に異常をきたして終了する。(コミカル描写一切なしなので、目茶苦茶怖い)

トゥルーエンドはすべて繋がっていて、アリス以外の人の視点から真実が語られるものもある。

トゥルーエンドをすべて見ることで、すべての真実が明らかになる。

歪みの国のアリス』は伏線の張り方が上手で、一旦解決したように見せかけて、実は…という展開への持って行きた方が、先を見たいという気持ちを刺激してくれる。

そして、すべてのエンドを見て真実を知ったとき、どこかスッキリしないような、でも前向きになれるというなんとも言えない気持ちになる。しかし、それが作品の魅力の一つとなっている。

シーンにあったBGMの数々

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出典:『歪みの国のアリス〜リコレクション〜』©NightmareSTUDIO

歪みの国のアリス』のBGMはシーンにあったものばかりで、耳に残るものが多い。

オルゴール曲が特に多くて、悲しげなものからどこか不気味で怖いものと幅広く、恐怖シーンでかかる「絶体絶命」という曲はタイトルにふさわしい危機感溢れるものとなっている。

(昔どうしても起きないといけないときにアラームに設定して、鳴った瞬間に強すぎて心臓が跳ねたことがある)

メインテーマの「My Sweet Pain」はかかる場所も神がかっていて、プレイしていて鳥肌が立ったのを覚えている。

アリスの心境を色濃く表したBGMの数々は魅力に溢れている。オルゴール曲が好きな私には刺さりまくった。

歪みの国のアリス』アプリ版とSwitch版の違い

歪みの国のアリス』はスマホ版(IOS版・Android版)とNintendo Switch版が配信されている。

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出典『歪みの国のアリス〜Encore〜』©SUNSOFT/ナイトメア・プロジェクト

スマホ版は基本無料である代わりに、1日に読める量に制限がある。これは、課金することで無制限で読めるようにるほか、昔公式ホームページにて公開されていたキャラコラムやキャラコメンタリーが読める。

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出典:『歪みの国のアリス〜リコレクション〜』©NightmareSTUDIO

switch版は買い切りで、スマホ版と違い横画面になっている。また、テキストスキップやオート機能を追加、BGMがリファインされた。

画像ギャラリーやムービーギャラリーも見れるよ【うになったが、キャラコラムが未収録。

お手軽に触ってみるならスマホ版を、横画面高画質で腰据えてやりたいならswitch版がおすすめ

小説版も読み応えバッチリ

歪みの国のアリス』は小説版が発行されていて、原作シナリオに忠実な出来となっている。

挿絵も可愛らしく、時に恐ろしく描かれていて『歪みの国のアリス』の世界観に浸れるようになっている。

トゥルーエンドを組み合わせて一本筋のシナリオに構成し直されていることと、グロ部分が少なめになってきて万人に読みやすい作品となっている。

児童文庫版も発売されていて、幅広い年齢層で楽しめるようになった。

 

ホラーの中にある切ない優しさが色んな人の心に残ると思うと嬉しいな。

まとめ

私が『歪みの国のアリス』を初プレイしたのは小学生の時で、それからアラサーになるまでずっと追いかけていた大好きな作品。

この作品を通して、人の裏にある罪悪感や恐ろしさ、優しさをたくさん知れた。

年を取るごとに、目線をアリスからアリス以外にも向けられるようになって、より作品の深みを知れたりと、何度読み返しても面白いのがいい。

わりと、コアな作品で知っている人が少ない気がしたので、今回布教記事を書いてみた。

この記事をきっかけに知ってくださった人は、是非触れてみて欲しい。優しい悪夢がずっと心に残ること間違いなしなので。

余談だが、私の推しはチェシャ猫なのだが、人間の推しはアリスの叔父。

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出典:『歪みの国のアリス〜リコレクション〜』©NightmareSTUDIO

怖い顔で不器用だが、優しい人。そして、過去の選択を悔いている人間味が愛おしくなる。