赤身は趣味に忠実

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猫の肉球からなぜポップコーンの匂いがするのか調べてみた

猫飼いが取り憑かれたように毎日行う行為、猫吸い。どの部位を好んで吸うかは人によるが、主に頭、お腹、そして肉球だと思う。私も毎日飼い猫・オセロットの匂いを吸いまくることで、日々の疲れを癒やしている。

そして、特に疲れている日は肉球の香りを堪能している。

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これが日々、匂いを吸い取られている猫。面構えが違う。

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オセロット(♂)約4歳。チャームポイントは折れ曲がったかぎしっぽ、ちょっぴり横長おまんじゅうフェイス。首輪についた『アサシンクリード』のアサシン教団マークが特徴。

これの紐を取っ払ってつけてる。

匂いを吸い取られるたびに迷惑そうな顔をする。

肉球を吸うたびに毎回不思議に思うことがある。それは、なぜ香ばしいポップコーンの匂いがするのか、である。

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チョコレート色の肉球

猫飼いなら理解いただけると思うのだが、めちゃくちゃ香ばしいよね?ちょっとしょっぱそうなポップコーンの香りがしない?いい匂いすぎてずっと吸っていたくなる。

なぜ、肉球はポップコーンの匂いがするのか、調べてみた。

 

猫の肉球が香ばしい理由f:id:kurururu96107:20240314115449j:image

調べてみたところ「コレ!」という理由は発見されていないらしい。猫って不思議なところも可愛い。ただ、いくつかの考察があったので、まとめてみた。

フェロモン

猫は肉球に臭腺があり、そこからフェロモンが出ていると考えられているそうだ。このフェロモンが人間には香ばしい匂いに感じているということらしい。

たしかに、フェロモンだとしたら人間がメロメロになるのも納得だ。抗えない肉球フェロモン。

猫は肉球に汗腺があるため、肉球は汗をかくそう。そして、その汗の匂いが香ばしさの正体であるという説がある。猫によってポップコーンの香ばしさだったり、パンケーキの香ばしさだったりと差があるのは、汗の匂いに個体差があるのか。

人間の臭いも個体差があるので、猫にも個体差があるのは当然なのかもしれない。色んな猫の肉球を吸って吸って吸いまくって、肉球の匂いソムリエになりたい。

床もしくは地面

家の中で過ごしている猫はカーペットやフローリング、家具、外に遊びに行く猫は地面の匂いがついているという考えがあるらしい。床から猫の肉球を間接的に接種できる可能性を感じて、試しにカーペットの匂いを嗅いでみたが、普通に臭かった。(近々洗いうことが決定)

猫の汗の匂いと床の匂いが混ざることで、あの香ばしさが生まれる可能性はあるかもしれない。

愛情

飼い主の勘違いという説もあって、思わず笑ってしまった。たしかに、かわいい猫が臭いはずが無い。いい匂いがして当然だ。

思春期の男子が好きな女子はいい匂いがするものと思い込んでいるのと同じなのかもしれない。理想と愛情で脳にバグを起こしている可能性がある。

肉球の匂いで人間をバグらせて虜にして下僕化させるなんて、猫はやはり人間の支配者として優秀なのかもしれない。

まとめ

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猫の肉球を摂取しながら、記事を書いていてとても楽しかった。ただ、吸いすぎて匂いが薄くなってしまったが…。

肉球が香ばしい匂いがする原因は諸説ありすぎてわからなかったが、みんな香ばしいと

思っているんだなと思ってニコニコになった。みんな嗅ぐよね。猫吸いは猫飼いのメンタルを救う。

吸ったことがない人は吸ってみよう!飛ぶぞ

猫が嫌がる場合は無理強いしてはいけないよ。猫好きなおばさんとの約束だぞ

1冊完結で読みやすいマンガ『蜂の巣』のあらすじと見どころ紹介

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今回は、時間がなくてもサラッと楽しめて、かつ心に残る作品を紹介したい。『峰倉かずや短編集 蜂の巣』のあらすじと見どころを書いていく。

峰倉かずや先生の代表作は『最遊記』や『ワイルドアダプター』。『蜂の巣』は「死」をブラックユーモアとして扱っており、全6話+番外編『蜘蛛の巣』で構成されていて、短いのでサラッと読むのに適している作品。

 

『蜂の巣』のあらすじ

舞台は未曾有の大災害に見舞われた影響で、治安が悪化してしまった日本。臓器売買が横行したことで、遺体の盗難の危険がある葬式は廃れていき、今では各地方役所が遺体の回収を行っていた。この「葬迎屋」と呼ばれる役職に就いている山崎と陣内のコンビは、日々遺体を回収しては火葬場まで運んでいた。

業務をこなす中で、恋人を亡くした女性、母を亡くした子どもなど、遺された様々な人々との交流が描かれる。

見どころ

ぶっ飛んだ設定に混ぜられている現実味

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出典:『峰倉かずや短編集 蜂の巣』©峰倉かずや/一迅社

『蜂の巣』の舞台は、未曾有の大災害が起きた日本。災害でダメージを受けたことで、新たな日本国基盤を一から立て直すために都道府県という括りを廃止。代わりに蜂の巣状のブロック形式で区画管理がされている。そして、災害が元となり、日本の治安は悪化して、臓器売買が横行するようになってしまった。そのため、遺体の尊厳を守るために、遺体盗難の危険がある葬式は廃れ、遺体は葬儀屋によって火葬場に直接運ばれるようになる。

設定だけを見ると、ちょっとぶっ飛んでいるように感じるが、実はあながちぶっ飛びすぎた設定でもない。区画が蜂の巣というのはぶっ飛んでいるが、災害による治安悪化、臓器売買の横行などは現実的に起こりうるものだ。

災害時というのは人の悪意が大きく動きやすいものだ。犯罪者を罰する機関も麻痺しているから、見逃されてしまうことも珍しくない。見逃される数が多くなれば、全体の治安に響くのは間違いない。

そして、臓器売買というのも海外ではオーソドックスな犯罪だ。人の死は一日に何十、何百と起きることであり、死体に困ることなど到底ありえない。そして、新鮮で健康な臓器を欲しがる人間というのはごまんといる。

ぶっ飛んだ設定に現実味のある設定が織り交ぜられることで、独特の世界観を構築しており、本作の面白さを演出している。

「死」をテーマに展開される人間ドラマ

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出典:『峰倉かずや短編集 蜂の巣』©峰倉かずや/一迅社

本作は「死」をテーマにしており、そこから様々な人間ドラマが展開していく。恋人を亡くした悲しみから自殺しようとする男性の話や、亡くなった父親の臓器を売りに行こうとする息子の話などがある。

どれも、一見シリアスで重そうだが、コミカルなシーンを挟んで描かれていて、必要以上の重さは感じない。

自殺しようとする男性に山崎が「火葬場まで運ぶのがめんどいから、火葬場で死んでくれ」と頼んだりする。男性も読者もポカーンとなるが、変に自殺しないように説得するというのは、クサく感じてしまうだろう。

この温度感がストーリーのテンポを良くしてくれていて、大変読みやすい。

コミカルなシーンがあるからといって、「死」を軽く扱っているわけではない。根底にあるのは「死をどう受け止めて生きるか」である。

「死」は誰にも等しく訪れるものであり、残された人たちに与える影響はとても大きい。残された人たちの気持ちに注目してほしい。

魅力のあるおじさんコンビ

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出典:『峰倉かずや短編集 蜂の巣』©峰倉かずや/一迅社

山崎は29歳でおじさん一歩手前(?)で陣内は51歳と立派なおじさんだ。このおじさんたちはが人間的な魅力に溢れたキャラである。

山崎は火葬場の受付の女性をナンパしたり、ルール上葬迎者に乗せては行けない生者を乗せたりなど、チャラくてルーズな性格をしている。しかし、ちゃらんぽらんというわけではなく、山崎なりにしっかりとした人生観と仕事への矜持を持ち合わせている。

陣内は競馬競艇プレロスが趣味とおじさんバリバリ。年齢が山崎より上であるが、軽口を叩き会えるフランクさを持った性格。一人娘を失くしている経験上、年頃の女の子に甘い。年齢を重ねて、仕事上様々な人達を見てきたために、人の気持ちを汲み取ることが上手で、遺族に寄り添える優しさを持つ。

この二人は人気のデコボココンビでも、先輩後輩が強調されたコンビでもないが、程よい距離感のある見ていて気持ちいコンビだと思う。お互いに軽口を叩き合ったり、臓器売買の人間に襲われたときは、山崎は運転、陣内は武力(銃)と役割分担もしっかりとしている。

流行りではないけれど、たしかな魅力を持ったキャラのコンビなので、推しにいかがだろうか?

おじさんコンビ美味しい。

他収録短編も面白い

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出典:『峰倉かずや短編集 蜂の巣』©峰倉かずや/一迅社

『蜂の巣』以外にも番外編の『蜘蛛の巣』、一迅社から発行されているオリジナルアンソロジー「アルカナ」に収録された峰倉かずや先生の短編が4本収録されている。

『蜘蛛の巣』は本作に登場する臓器売買を生業にしている恩田とその部下・漆原を掘り下げた内容となっている。本編では顔が少ししか出なかったので、2人の人となりがわかるのが面白い。

他にも、用意された題材から峰倉かずや先生の解釈で展開される独特のストーリーは、短いにも関わらず、どれも印象深く引き込まれるものとなっている。

まとめ

『蜂の巣』はこの単行本で完結となっていて、1冊であっさり読める。しかし、あっさり読めるのに内容はどれも印象深く、心に残るものとなっていて読み応えはバッチリ。

峰倉かずや先生が好きな人なら買って損はないだろう。知らないという方は、ここを入門として読んでみるのもいいかもしれない。

アニメ『モノノ怪』の「鵺」のあらすじと背景美術の元ネタ解説

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あらすじ

今は寂れた香道・笛小路流の家元の邸宅に、家の主・瑠璃姫の婿候補として訪れた公家・大澤、廻船問屋・半井、東侍・室町。そして、なぜかそこに混じる薬売り。薬売りは本来来るはずだった4人目の婿候補・実尊寺の代わりにを務めることとなり、婿を決める戦い、組香に参加する。

しかし、勝者が決まる前に瑠璃姫は何者かに殺されてしまう。薬売り以外の3人は瑠璃姫の死を悲しむことなく、「東大寺」と呼ばれる香木を脇目もふらずに探し始める。

背景美術元ネタ

葡萄小禽図襖絵

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出典:「モノノ怪」/©モノノ怪製作委員会

冒頭や場面転換の襖に描かれてる葡萄の絵は鹿苑寺大書院障壁画のひとつで、江戸時代の絵師・伊藤若冲の「葡萄小禽図襖絵」が元ネタである。

大書院の中でも一番格式の高い一之間に飾られており、どころどころ葉に穴が空いていたり、不規則にぐねぐねと曲がる枝など、リアルに描かれた絵となっている。

蘭奢待の格式に合わせて格式の高い絵を採用したのか?それとも、蘭奢待の別名である東大寺の寺繋がりだろうか。

白象黒牛図屏風
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出典:「モノノ怪」/©モノノ怪製作委員会

薬売りたちが組香をする部屋の襖に描かれている白象と黒牛は、江戸時代の絵師・長沢芦雪による「白象黒牛図屏風」が元ネタである。

元絵は二枚の屏風に一頭ずつ描かれており、屏風からはみ出すほどに大胆に描かれた白象と黒牛が目を引く作品となっている。この作品は屏風を開くときが、一番楽しいという。

黒牛の方は屏風を畳んだ状態で見ると、黒い岩のそばでくつろぐ犬の絵のように見えるが、広げていくと黒い岩ではなく大きな黒牛であることがわかっていく。白象は畳んだ状態だと白い壁にしか見えないが、開いていくと大きな白象であることがわかる。見る場所によって、印象が変わる面白い絵となっている

見る角度によって姿を変えるというのは、鵺の性質とマッチしているように思う。

余談だが、黒牛に描かれた子犬の気の抜けた姿が可愛いと一時期SNSで話題となっていたので、元絵の方も見てみてほしい。めちゃくちゃ可愛い。

虎図襖絵

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出典:「モノノ怪」/©モノノ怪製作委員会

組香の部屋の襖に描かれている虎の絵は、無量寺の室中之間の襖に描かれている長沢芦雪の「虎図」が元ネタである。芦雪の持ち味である動物の大胆なデフォルメが特徴的で、迫力がありながらどこか愛らしさを持った虎の絵だ。

鵺は文献によって様々な姿で伝えられて描かれており、胴体や足が虎であるというものがある。そこから、虎図を採用した可能性がある。

群鶏図

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出典:「モノノ怪」/©モノノ怪製作委員会

組香の部屋から瑠璃姫のいる部屋へ通づる襖に描かれている鶏は伊藤若冲の「群鶏図」が元ネタである。そのままの採用ではなく、一部を切り取って使われている。そのため、少し分かりづらいが、鶏の鶏冠の描き方を比べると、とても似ている。

室町時代の資料には胴体が鶏の鵺が出現したというところからの、採用と思われる。

ちなみに、鵺の声はトラツグミという鳥が正体と言われており、鵺鳥と呼ばれることもあるそう。

池辺群虫図

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出典:「モノノ怪」/©モノノ怪製作委員会

瑠璃姫が屏風に描かれた絵を相手に色に耽るシーンの合間に挟まれる蛙の絵は、伊藤若冲の「池辺群虫図」が元ネタである。元絵は蛙以外にも様々な虫が描かれているものとなっている。

蛙の姿を切り取って使用して、男女の絡みを表している。絡む蛙は瑠璃姫、左下にいる絡む蛙を見ている蛙は半井だと思われる。

まとめ

「鵺」は純正なホラーといった雰囲気が好きな話。私が一番怖いと思ったシーンは首の骨が折れる音がするシーン。鳥肌が立つほど怖い。色の使い方も印象的で、他の回とは違って、薬売りさん以外の色調が違うんのも印象深い。香りを色で表している表現は、初見時に感動したのを覚えている。

ちなみに、今回の話で薬売りさんが呆然とする表情を見せてくれるのが新鮮で好き。あと、田舎侍さんが可愛くて好き。田舎侍ということにコンプレックスを持っているのが、人間味全開で可愛い。表情の豊かさのなんと愛らしい。

アニメ『モノノ怪』はAmazon Prime Video(無料お試し有)にて配信中。

ゆっくり見たい人にはコミック版がおすすめ

襖の絵の描き込みが丁寧なので、非常に見やすい。ホラーな雰囲気も画面から香ってきそうなお香の描写も素晴らしい作品となっている。

前回の「のっぺらぼう」はこちらから

kurururu96107.hatenablog.com

アニメ『モノノ怪』の「のっぺらぼう」のあらすじと背景美術の元ネタ解説

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前回の「海坊主」に続いて「のっぺらぼう」の背景美術の元ネタを考察してく。

「のっぺらぼう」のあらすじ

嫁ぎ先の夫とその家族を皆殺しにした女性・お蝶。お蝶は奉行から死罪を言い渡されて牢に入っていたが、その牢に奉行に捕まったという薬売りがやってくる。薬売りはお蝶との会話のなかで、本当に家族を皆殺しにしたのかを聞く。そこに、仮面をつけたアヤカシの男が現れて、薬売りを退けてお蝶に結婚を申し込む。お蝶は結婚の申し出を受け入れて祝言を上げている最中に、再度薬売りが現れて…。

 

背景美術の元ネタ

紅白梅図屏風

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出典:「モノノ怪」/ ©モノノ怪製作委員会

お蝶の牢屋の壁に描かれている模様は江戸時代中期を代表する絵師・尾形光琳の「紅白梅図屏風」が元ネタ。光琳の傑作と謳われる作品で、紅梅と白梅の間に川が流れている絵となっている。梅の木の幹の部分をアップにして描かれているようで、一見するとわかりにくい。

また、作中に登場する梅も「紅白梅図屏風」が元ネタである。梅はまだ寒い1月下旬かが開花時期となっており、まだ厳しい寒さの残るなかで咲くことから「忍耐」という花言葉を持つ。

「忍耐」はお蝶を表す言葉として相応しいように思う。お蝶はお家再建のために母親から厳しい稽古教育を受け、年相応に遊ぶことも許されず、好きでも相手に嫁ぎ、さらにそこで虐げられる。お蝶の心は耐えきれずモノノ怪を生み出してしまうが、それでもそこまで耐え忍んだお蝶の人生を思うと、込み上げてくるものがある。

群舞図

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出典:「モノノ怪」/ ©モノノ怪製作委員会

お蝶のいる台所にある衝立に描かれている踊っている黒い着物の女性は、江戸時代後期の絵師・鈴木其一の「群舞図」が元ネタである。元絵の方は5人の男女が踊っている絵であるが、『モノノ怪』では黒い着物女性だけが採用されている。

元絵の方が、ネットで調べる限り結構情報が少なく、調べても採用の理由がわからず機会があれば、本などで調べてみたい。

モノノ怪』では黒い着物をお蝶の義妹にあたる人物が着用している。そのため、踊っている女性は義妹を表したものである。

観楓図屏風

上記と同じく台所にある衝立に描かれた踊る男性は室町時代から安土桃山時代の絵師・狩野秀頼の「観楓図屏風」が元ネタ。元絵は清滝川のほとりで様々な人々が紅葉狩を楽しむ人々の姿が描かれた作品である。この男性は元絵の左側にある酒宴を楽しむ男性の中のひとりがモデル。

モノノ怪』ではお蝶の義弟にあたる人物を表したもので、夫婦で踊りを楽しんでいる。

まとめ

「のっぺらぼう」は抑圧されたお蝶の人生が気の毒になる話だ。よく、幼少期になにかを抑圧された人間は大人になると、抑圧されたものに執着をするという。たとえば、アニメやゲームなんかを過剰に禁止された人は、大人になって親の手から離れると依存するように夢中になるとか。

親という監視者がいなくなり、自身が自由であると認識できればいいのだろうが、お蝶は親の元から離れても、嫁ぎ先という監視者がおり抑圧され続けたために、表に出すことなく内部でそれを発散していた。

「のっぺらぼう」には梅が多く登場し、本文で書いたように「忍耐」のお蝶の人生を表している。さらに、梅に関する言葉には梅根性なるものも存在しており、頑固で変わらない性質を指すという。

物語のラストで、お蝶は変われたのだろうか。その解釈は見た人によって変わるだろうが、私は変わったと思っている。

今回の背景美術はあまり調べきれなかった感が否めない。時間があれば再度本などで調べ直したいと思う。

アニメ『モノノ怪』はAmazon Prime Video(無料お試し有)にて配信中。

ゆっくり見たいという人にはコミック版がおすすめ。

原作再現度が高い蜷川ヤエコ先生による美麗な絵で、お蝶の心を味わうことができる。表紙のハイパーさんと仮面の男がカッコよすぎる。

前回の「海坊主」はこちらかどうぞ

kurururu96107.hatenablog.com

アニメ『モノノ怪』の「海坊主」のあらすじと背景美術の元ネタ解説

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前回に続いてアニメ『モノノ怪』の「海坊主」の背景美術について書いていく。

前回の日本画から変わって海外の絵画が採用されている。

「海坊主」のあらすじ

廻船問屋をしている三國屋多門の江戸行きの廻船に乗っていた薬売り。船には、かつて化猫騒動で面識のある・加世(かよ)、高僧・源慧(げんけい)、その弟子・菖源(そうげん)、修験者・柳幻殃斉(やなぎ げんようさい)、浪人・佐々木兵衛(ささき ひょうえ)が乗り合わせていた。道中の夜、何者かの細工によって船はアヤカシの海と呼ばれる海域「竜の三角」に迷い込んでしまう。

そこで、モノノ怪に出会った薬売りはモノノ怪の正体を探っていく…。

 

背景美術の元ネタ

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出典:©モノノ怪製作委員会

船の内部に描かれている男女の絵はグスタフ・クリムトの「成就」と「歓喜の歌」、「水蛇Ⅰ」、「ユディトⅠ」、「水の妖精」が組み合せられている。

成就

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出典:©モノノ怪製作委員会

「成就」とはストクレ フリーズの3連作のひとつであり、抱き合うカップルの絵である。元絵の方は男女ともに服を着ているが、「海坊主」では男性が裸、女性の下半身は蛇のようになっている。

「成就」のカップルはクリムトとその良き友人・エミーリエだという説があるという。なぜ、友人のエミーリエが出てくるのか、詳しい説明はやや複雑なので割愛する。

簡単に説明すると、結婚はしていないし子供いないけれど、心が最も近くにあった関係といった感じだろうか。エミーリエは誰よりもクリムトに寄り添い、支えた人物で、周囲からは妻であるとすら思われていた女性。

歓喜の歌

裸の男性の後ろ姿は「歓喜の歌」と一緒のように見える。「歓喜の歌」は「ベートーヴェン フリーズ」と呼ばれる3連作品のひとつ。

歓喜の歌」には【女性による男性の救済】というテーマがあるらしい。

水蛇Ⅰ

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出典:©モノノ怪製作委員会

男女の足元にある鱗の描かれた部分は、「水蛇Ⅰ」の下半身が蛇の女性たちの後ろにある鱗部分に似ている。

また、抱き合うカップルの女性の下半身が蛇(あるいは魚)に置き換わっているのも「水蛇Ⅰ」がモチーフだろうか。

元絵の「水蛇Ⅰ」に描かれている女性は穏やかな表情に見えることから、お庸は負の感情を持たず、海を漂っているという暗示なのか。

ユディトⅠ

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出典:©モノノ怪製作委員会

抱き合う男女の横にある金色の植物は、「ユディトⅠ」の背景に描かれていた、イチジクとブドウの木に酷似している。

こちらは、調べてみても採用の理由がイマイチわからなかった。

水の妖精

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出典:©モノノ怪製作委員会

男女の左下辺りにある顔のついた黒いものは「水の妖精」だと思われる。

水の妖精は悲恋物語に多く登場するため、叶わぬ恋心を抱いていたお庸を表しているのだろうか。

上記のクリムトの絵を組み合わせることで、お庸の本当の気持ち、叶わない恋心、心が最も近くにあった女性に抱かれて救済される男性という、お庸と源慧を表しているように思える。

最後に現れたお庸は源慧に寄り添うような仕草を見せている。

生命の樹

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出典:©モノノ怪製作委員会

船内にある水槽に描かれた絵はクリムトの「生命の樹」と「水蛇Ⅰ」を組み合わせたものと思われる。

生命の樹」は「成就」同じく、3連作のひとつ。大樹から伸びた枝がぐるぐると回転している姿は、人生の複雑さを表している。

ちなみに、「水蛇Ⅰ」は鱗部分が使われている。

ちょっとした小ネタ

クリムトとは関係ないちょっとした小ネタを紹介。

灰で結界を作るのは『怪 〜ayakashi〜』のオマージュ

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出典:©モノノ怪製作委員会

モノノ怪によって船が襲われたときに、修験者の幻殃斉が結界を張るために灰を持ってくるように指示をするシーンがある。

灰で結界を張るシーンは『怪 〜ayakashi〜』の「化猫」にも登場するため、セルフオマージュだと思われる。

まとめ

クリムトは女性の官能的な美とほのかに香る死を描いていた。「海坊主」では、源慧が過去を語るシーンにお庸の足が艶かしく写る。それから、源慧と弟子の菖源と肉体関係があるような仄めかしなどがあったりと「性」を彷彿させる描写が多い。

クリムトを採用したのはこういった部分を表現するためだったのだろうか。

目茶苦茶余談なのだが、私がクリムトを知ったのはアニメ『エルフェンリート』のオープニングの絵からである。クリムトの絵の人物が登場キャラたちになっていて、とても印象深い。詳しい話は今回と関係ないので、また今度。

「海坊主」はキャラ同士の掛け合いのテンポが良くて、聞いていて楽しくなる。とくに加世と幻殃斉の2人はコミカルな喋りと行動が多いので好き。ゆかな氏と関智一氏の軽快な喋りがなんか癖になる。

アニメ『モノノ怪』はAmazon Prime Video(無料お試し有)にて配信中。

ゆっくり見てみたい人はコミック版がおすすめ。

 

蜷川ヤエコ先生がアニメをそのまま漫画にしてくださっていて、アニメの雰囲気をそのままお手軽に楽しめる。

前回の「座敷童子」の記事はこちらからどうぞ

kurururu96107.hatenablog.com

次は「のっぺらぼう」を書きたいな。

→書けたので、よろしかったらどうぞ

kurururu96107.hatenablog.com