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アニメ『薬屋のひとりごと』に出た鉛中毒について少し調べてみた

アニメ『薬屋のひとりごと』は、原作の雰囲気を守りつつ、背景美術や美麗なキャラデザイン、高クオリティの作画と申し分ない出来になっている。

覇権と言われるのも納得だ。

出典:©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

猫猫が美麗作画でめちゃくちゃ美人。

OPも印象深い。曲も良いんだけど、OPでほぼ猫猫一色というのが異色感溢れている。個人的にOPは「こういうキャラがいるよ!」っていうお披露目の場だと思っていたから、色々新鮮だった。

内容も架空中華ミステリーといった感じ。ミステリーもなんちゃってミステリーではなく、薬学や科学的な根拠を持つものばかりで安心して楽しめる。なんちゃってミステリーのとんでもトリックなんかはあんまり好きじゃないので。

(アンデッドガール・マーダーファルスのような最初から異能力が絡んでいると明示されている場合はOK。むしろ好き)

薬草や毒、病気などの勉強にもなるから、見ていて大変楽しい。猫猫がちょいちょい猫になるのも可愛い。

出典:©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

そんな、『薬屋のひとりごと』に出る「鉛中毒」については、体に悪いというさらっとしたことは知っている。鉛やばいくらいだけど。しかし、それが歴史にどの程度関与して、どんな影響を与えたのもなのかは知らない。

薬屋のひとりごと』では、後宮の妃たちが鉛を含んだ白粉を使って赤ん坊が死んでしまうという悲劇が起きていたが、日本の歴史ではどうだったのか。

気になって調べてみた。

鉛中毒は主に吸引、経口摂取で鉛を体内に取り込んだことで起きる中毒だ。鉛は酵素作用を阻害するそうで、消化器官や神経系にダメージを与え、消化不良や手足の震え、さらに脳膜炎などの症状が出る。

出典:©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

聞くだけで怖い。

作中では梨花妃が重篤な中毒症状を起こしていた。おそらく消化器官に症状が出たのか、食事を摂ることができずに衰弱していた。あんまりな姿に治ってよかったと安堵したものだ。

鉛を使用した白粉は『薬屋のひとりごと』で言われていた通り、発色や伸びが良いことから女性にとても人気のあるもので日本では奈良時代に中国から伝わったようだ。

美を求める女性というのは国や文化が違えど変わらないらしい。

鉛が使用された白粉を日本で始めて作ったのは、僧観成(そうかんじょう)という人物で、持統天皇に献上するととても喜ばれたらしい。

当時の日本では肌を白くすることが流行りだったようだし、美白であれば多少の顔の良し悪しなど関係なかったのだろう。色の白いは七難隠すと言うし。そういった価値観が根強かったために、鉛白粉は瞬く間に広まったようだ。

時代が進んで江戸時代になっても、女性は色白が好まれたらしく、化粧に関する指南書にも白粉の記述がある。女性の化粧は口紅や頬紅の紅、白粉の白、眉毛を書く黒の3色で構成するのがもっとも美しかった。

元々は貴族などの階級が高い人達が鉛白粉を使っていたが、やがて鉛が安価であることから庶民の手にも渡るようになっていった。

鉛白粉は胸元まで塗ることがあったようで、乳母などが胸元まで鉛白粉を塗った結果、舐めてしまった赤ん坊が消化不良や、脳膜炎などになってしまう事故が起きていた。これは、『薬屋のひとりごと』と一緒。こういった事故が増えていくと、鉛白粉が危険であることを指摘する人たちも現れる。

実は、鉛の危険性については早くからある程度知られていたらしい。そのため、代用品なども作られたが、鉛白粉の伸びの良さなどには到底及ばず、鉛白粉は使われ続けた。美への執着とは死をも凌駕するのか、はたまた自分は大丈夫だと思っていたのかはわからない。

鉛白粉は明治になっても使われ続けていたが、ついに社会問題になる出来事が起きてしまう。歌舞伎俳優をしていた男性が、歌舞伎の際に使用していた鉛白粉が原因で足の震えが止まらなくなり倒れてしまった。

その足の震えの原因が慢性鉛中毒であることが発覚して、鉛の有害性について大きな問題となり規制されることになるはず。で、あったが代用品がないことを理由に規制を見送ったのだ。

現代だったら大炎上ものである。人命が軽い気がするのは時代なのか。

そして、ついに大正に時代が変わると、子どもの原因不明の脳膜炎が鉛中毒によるものであったと解明されたことで、ようやく法律で鉛白の使用が禁止された。

奈良時代が710年からで法規制が入ったの大正12年なので、実に約1200年もの間、鉛白粉が使われていたようだ。

いやいや長すぎ。鉛は古代ローマで愛用されていた事自体は知っていたけど、日本の鉛白粉も時代が古い。

日本では美白ブームが何度も起きているが、今では自分にあった色が一番綺麗という形に収まってきているように感じる。そもそも現代で真っ白に顔を塗ろうものならば、顔だけ浮いて生首化するか、写真を取ったときに白飛びしてみっともなくなってしまうだろう。

色の白いは七難隠すは無いも同然になっている。

鉛中毒への関心を持つ機会を作ってくれた『薬屋のひとりごと』には感謝。まだまだ、色々と薬学や毒、病気などなど気になることもあるし、猫猫と壬氏の関係の進展も見たいので今後も追っていこう。

2クールでやると聞いているから、長く楽しめそうで嬉しい。

出典:©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

ちなみに、私の推しは高順です。しゅきしゅき。