
『ガラージュ』は1999年に発売されたPCゲームで、一風変わった世界観と難解なストーリーから、同時期に発売された『クーロンズゲート』『BAROQUE』と合わせて「三大歪みゲー」と呼ばれることもある作品だ。
原作はPCで出荷本数が少なかったなど様々な事情から、プレミアがついて1本10万円超えなんてこともあった。しかし、『ガラージュ完全版』としてスマホ版、Steam版、さらにNintendo Switch版と発売されて、お手頃に手が届くようになった。
こんな嬉しいことはない。ずっと気になっていた作品で、スマホ版が発売されてすぐにプレイして、私の好きなゲーム殿堂入りを果たした。
なので、気になっているけどまだプレイしていない人に向けて布教しようと思う。今回は『ガラージュ完全版』のあらすじと魅力を紹介していく。
あらすじ
精神治療装置「ガラージュ」にかけられた男性・ヤンは精神世界に入るために、眩い光に包まれていった。そして、機械と汚水によって構築された世界で目を覚ました機械の身体の主人公は、部屋に残されたメモに記された「この世界は正しくないから出ていくように」という内容の通り、精神世界からの脱出を目指す。
魅力
どこかノスタルジックな世界
出典:『ガラージュ:完全版』©作場金属製作所
「ガラージュ」内にある建物は木造で、機械は錆びていて、足の下には汚水が流れている。また、電球による灯りがメインなので、全体的に薄暗い。そのため、画面から全体的にじっとりとした湿度を強く感じる。
しかし、この湿度は不気味さや不快な感じなどはなく、プレイしているとどこか心地よさすら感じてくるノスタルジックな世界になっている。
私のお気に入りは、アイテムを買えるマルヤ百貨店。一見ごちゃごちゃしているように見えるけれど、看板や標識が凝っていて好き。木の板に直に書かれた文字や、ブリキの看板が錆びて文字が掠れてしまっているところが、レトロな感じがしてほくほくしてしまう。
個性豊かすぎる住民たちとの交流
出典:『ガラージュ:完全版』©作場金属製作所
『ガラージュ』は探索をしながら住民たちと交流をして、様々なヒントを得ながら攻略していくゲームとなっている。
その、交流していく住民たちがとても個性豊か。外見は機械なのだが、そのデザインも一風変わったものばかりでひと目見たら忘れらないものばかり。
しかし、中身は人間味たっぷりと、見た目とのギャップがすごい。
例えば、プレイ中にお世話になるギムノンという雄機械は、主人公に対してフランクに接してくれたり、レイコという雌機械に好意を持っているという描写があったりと親しみやすいキャラだ。しかし、物語が進んでいき、とあることが起こると精神的に余裕をなくして激昂したり、自己中心的な言動をとったりと生々しい人間性を見せてくれる。
ときに住民たちの哲学的な言葉に頭を捻ったり、的確なアドバイスに胸を突かれたり、交流するにつれて見えてくる住民たちの内面にある人らしさを感じてほっこりしたり、ゾワゾワしたりととても楽しい。
どの住民たちにも存在している意味があり、その意味を考えていくのも『ガラージュ』の楽しさの一つだと思う。
愛らしいヒロインたち
出典:『ガラージュ:完全版』©作場金属製作所
『ガラージュ』は物語を進めていくと、道代、レイコ、シャンという3人のヒロインと仲を深めることができる。そして、ヒロインとの好感度が上がると同棲したり、食べ物をあげたりなどができるようになる。
3人は白瓦斯屋という、機械たちが動くために必要な燃料を補給できるお店に務めている。
たくさん指名したヒロインのルートに入ることで、そのヒロインの過去を知ったり、内面を深く知ることができる。
初見だと外見にぎょっとしてしまい、可愛いと思えない人もいるかもしれない。しかし、少しずつ心を開いてくれて、会話をしてくれるようになってくると可愛いと思えるようになる。本当だよ。
私は、道代推しなのだけれど、道代の赤いボディに愛らしい少女らしさを感じたり、初々しい態度にこっちまでドキドキしてまったり、守ってあげたくなるような儚さがあって大好き。
レイコの気の強い性格も可愛いし、シャンの控えめな雰囲気も可愛い。ネタバレになるから控えるけど、もう一人いるヒロインも好き。
食べ物の好みも違うから、各ヒロインの好みに合ったものをあげて、喜んでいる姿を見ているとずっとこの世界にいたいと思ってしまう。
生々しい感情の描写
出典:『ガラージュ:完全版』©作場金属製作所
冒頭でヤンが精神治療にかけられることが明言されている通り、本作はヤンのトラウマが強く描かれている。幼少期からおそらく青年期頃に起きた出来事がトラウマとして心に根付いており、なんらかのきっかけで治療に至ったと思われる。
トラウマは女性関係のものであり、トラウマの内容については重大なネタバレとなってしまうので伏せておく。
いつかネタバレ有りの考察解説記事を書きたいな。
本作に出てくるトラウマはとても生々しく感じるものとなっている。
失望、絶望、猜疑心、正義感、親切、愛情。様々な環境、状況で抱いた感情と、起こってしまった事実への後悔が生々しく描写されていて、心を抉ってくる。
私は、歪んでしまった価値観故に、正したくても正せない人間関係の苦しみの描写が切なくて好き。
解きほぐされていく無意識
出典:『ガラージュ:完全版』©作場金属製作所
「ガラージュ」は精神治療を目的とした装置であり、施術内容は箱庭療法がもっとも近いと思われる。
箱庭療法とは砂の入った箱を使って、砂を盛ったり掘ったり、ミニチュア模型を使って箱の中に患者のイメージする自由な世界を作ってもらうというもの。
この箱庭療法では、自分の中にある無意識のイメージの具現化ができる。
人間には自覚している意識と、自覚できていない無意識とがあって、『ガラージュ』では、無意識の中にある葛藤やトラウマを題材として扱っている。
世界はヤンの無意識がたくさん反映されたものとなっている。一見無意味に見えるものや、住民たちの存在や役割もヤンの無意識の働きかけによって構築されているため、無意味なものはない。
最初のうちはスルーしてしまう要素も、物語が進んでいくごとに、パズルのピースがハマっていくようにひとつひとつの要素に納得がいくようになっている。
ただ、様々なことについての明言はほぼないので、提示された文章やアイテムから読み解いていく必要がある。考察などが好きな人には刺さると思う。
あえて不便なシステム
出典:『ガラージュ:完全版』©作場金属製作所
『ガラージュ』のマップは広いというわけではないが、入り組んでいることと移動が独特なため、慣れない内は迷ってしまったり目的地に着けないこともままある。なのに、ファストラベルは未実装なので、目的地まで行くには一歩一歩進んでいかなければならない
作者の作場知生さんは空間探索がお好きとのことで、マップをじっくり探索できるようにしたのかな。
完全版にするにあわせて、いたるところが現代風にリメイクされているのだが、ここをそのままにしているのはオリジナル版の体験を損なわせないためのこだわりを感じる。
慣れてくるまでは目的地に着くまで時間がかかるのでファストラが欲しくなるけれど、「ガラージュ」内は人の心の内面、人生であると思えば短縮せず一歩一歩しっかり歩むのも情緒が感じられる。
不便なシステムも世界観を味わうために楽しめる人は、とことん楽しめると思う。
プレイの仕方で見えるものが変わるストーリー
出典:『ガラージュ:完全版』©作場金属製作所
前の項目で書いた通り、『ガラージュ』は台詞やアイテム、手記などからキャラの気持ちやストーリーがわかるようになっているが、細かい部分については明言されていないことが多い。
一本の話の部分を抜き出しているような感じで、一部分と一部分の間は語られないため、その間の解釈はプレイヤーに委ねられる形になっている。
『ガラージュ』はメインのストーリーをクリアするだけなら、3時間か長くて4時間ほどで終わるほど短い。しかし、アイテムの収集や住民たちの会話を全て聞く、収集要素の釣りでコンプリートを目指すなど、ストーリー以外の要素に時間をかけることで、新しい視点を得て、解釈の幅が広がったりする。
どんなプレイをするかで、ストーリーの見え方が変わるのは一番の魅力だと思う。何度も周回して、その都度解釈が広がっていくのは本当に楽しかった。
スマホ版・Switch版の表現規制について
出典:『ガラージュ:完全版』©作場金属製作所
『ガラージュ完全版』はsteam版を除いた媒体では、一部オリジナル版とは異なる表現が用いられている。これは、オリジナル版の描写がやや過激であったため、googleなどの会社の規定に引っかかってしまった様子。(女性の裸体、欠損などが過激と判断されたのかな)
そのため、スマホ板とSwitch版はオリジナル版より描写がマイルドになっている。(シナリオに変化はない)代わりにsteam版は表現規制がないため、オリジナル版と同じ描写を楽しめるようになっている。
表現規制を気にしない人はどこでもお手軽にプレイできるスマホ版やSwitch版を、オリジナル版の表現そのままで、腰を据えてやりたい人はsteam版がおすすめ。
私はAndroid版を買ったよ。配信すぐにインストールしたとには表現規制なかったんだけど、アップデートで差し替えられて悲しかった。
(規定がある以上は仕方ないのは理解してる)
悲しかったけど、表現が変わった方もなんだかんだ好き。
まとめ
刺さる人にはとことん刺さるゲーム。独特な世界観に最初は慣れないかもしれないけれど、プレイしているとだんだんこの世界が愛おしくなってきて、終わらせるのが惜しくなる。
そして、意を決してようやく終わらせたあとは少し放心してしまうほど、完成度の高いシナリオは本当に素晴らしい。
プレイ後の余韻は決して明るいものではないけれど、心に深く深く残って虜になってしまう。
幻の歪みゲーと言われた『ガラージュ』がお手軽にプレイできるようになったのは、まさに奇跡みたいなもの。気になっているけど、まだプレイしてないよという人は是非是非プレイしてみてほしい。
いつか、考察・解説記事も書きたいな。







