オタクというのは布教しないと生きられない生き物である。私もその例に漏れない人間だ。というわけで、私の性癖に大いに影響を与えた不朽の名作漫画『3×3 EYES』を紹介したい。
正直目茶苦茶古い作品だが神話や妖怪が題材、ある種のチート能力持ち主人公、可愛いくて一途なヒロインなどが出てくるので、いわゆる「なろう系」が好きな若い人にもウケそうだと個人的に思ってる。
ちなみに、作者の高田裕三さんは『転生したらスライスだった件について』の番外作品『転スラ番外編 ~とある休暇の過ごし方~』のコミカライズを担当している。
『3×3 EYES』のあらすじ
主人公の高校生・藤井八雲(ふじいやくも)は、ある時チベットから来たという少女・パイと出会う。パイは行方不明だった考古学者の八雲の父の手紙を持っていた。そこには彼女が伝説の妖怪・三只眼吽迦羅(さんじやんうんから)であること、パイの願いは「人間になること」であることが書かれていた。半信半疑の八雲であったが、パイの使い魔・タクヒの暴走によりにより死にかけたさいに、三只眼の力によって不死身の体になる无(ウー)という存在にされてしまう。このことをきっかけに、パイが人間ではないことを悟って彼女を人間にするという約束をした。
八雲はパイと香港、チベット、インドなどを巡りながら人間になる方法を探すうちに、三只眼吽迦羅の王・鬼眼王(カイヤンワン)の復活を目論む鬼眼王の无・ベナレスと戦うことになる。ベナレスと鬼眼王の企てている人類を滅亡させる儀式「サンハーラ」を止めるべく、旅の道中に出会った仲間たちと共に八雲はベナレスたちに立ち向かう。
果たして、八雲とパイは人間になることができるのか。
オススメポイント6つ
一途な八雲とパイの関係が尊い
八雲とパイは半ば事故のような形で主従関係を結ぶことになる。最初は自分が化け物にされたとショックを受ける八雲だが、パイ、三只眼との交流を経て想うようになっていく。女性キャラからモテるが、八雲は作中一貫してパイと三只眼だけを一途に好きで、「パイになんかあったら…」とぼろぼろ泣くほど。
最初の頃のパイは幼さの目立つ言動で色恋沙汰に興味はなかったために、八雲のことを友達だと思っていた。しかし、パイは自分の夢を肯定してくれた上に、首が飛ぼうが腕が飛ぼうが内蔵をぶちまけようが守ってくれる八雲に想いを寄せていくようになる。パイの良いところは死なない上に自分を守ってくれる男性がいるのに、守られることに徹しないこと。
お互いがお互いを守るために動くので、たまにすれ違いも起きるけど、それだけ相手を想っているのが伝わる。最後までお互いの気持ちがブレることがないので、ひたすら尊いを味わえる。
絶対にブレない浮つかないキャラが好きな人には刺さる。
元々は作者の高田さんは少女漫画家希望であったため、男女の恋愛模様の描写が丁寧になったと考えられる。(当時の少女漫画の絵と高田さんの絵があっていなかったために、少女漫画家は断念された。)
養殖ツンデレより破壊力のある天然ツンデ
パイの主人格である三只眼は現代で言うところのツンデレキャラであるが、連載されていた1987年にはまだ「ツンデレ」の概念が存在しなかった。そのため、現代にありふれているテンプレの養殖ツンデレとは違う、天然のツンデレを味わうことができる。
また、比較的すぐにデレてしまう養殖ツンデレとは違い、なかなかデレない。
三只眼はプライドが非常に高い上に傲慢。初期では八雲のことを力がなく頼りにならない下等な奴隷という認識でいた。そのため、当たりが滅茶苦茶強く普通に罵倒してくる。しかし、自分の中のシヴァへの想いに決着をつけたあとは、精神的にも能力的にも成長した八雲を信頼していくようになる。まだまだ口は悪いが、言葉の端々から八雲への信頼が見えるようになってきて、可愛げが出てくる。なんだったら、嫉妬する姿すら見せてくれる。
そして、終盤ではついに八雲への好意を隠さず、抱いてほしいと頼むという究極のデレを発動する。
ツン期間が長っただけに、このデレの破壊力は凄まじい。ツンデレが好きな人には刺さると信じてる。
グロいが迫力ある戦闘シーン
无である八雲は主であるパイが死なない限り、心臓を取り出そうが頭がもげようが死ぬことはない。そのため、八雲の身体がもげたり、内臓が出たりとグロテスクなシーンが満載。高田さんはグロテスクな描写を描くのが上手なので結構エグい。
特に序盤の八雲は普通の高校生だったので不死身であること以外に特殊な力がないこともあって、捨て身タックルが多い。弾ける貫かれるぶち撒けると大盤振舞い。
しかし、その分迫力のある戦闘シーンが楽しめる。八雲が物理的にボロボロになりながらも、パイのために獣魔術を使ったり、臨機応変に剣や体術を繰り出していくのがカッコいい。
また、八雲のライバルであるベナレスも絶対的な強者を崩さず、繰り出す技の迫力や八雲との緊迫感あふれる戦闘もたまらなく魅力的である。
唱えたくなる呪文
『3×3 EYES』には数多くの呪文が登場する。代表的なものは八雲が獣魔を召喚する際に唱える「藤井八雲の名において命ずる。出よ、〇〇(獣魔の名前)!」がある。
今では古臭いかもしれないが、このシンプルな詠唱は耳馴染みがよく、程よく中二心をくすぐってくる。今のカッコよさを追求したものも良いのだが、このくらいのほうがなんとなく唱えたくなる。
また、もうひとつ代表的なものがパイの「バラス・ヴィダーヒ(我に力を)」がある。これは何かを発するための呪文ではなく、三只眼の力を開放するための呪文である。
独特な音に私は滅茶苦茶ハマった。子供の頃によく真似して唱えていた。なんだったら今でも仕事などでメンタルがやられた時に脳死で脳内で永久に唱える時があるレベルで刻まれている。
序盤は宗教を絡めた胸熱の冒険活劇
作品初期は中国文化、インド神話を絡めた宗教色の強い冒険活劇となっている。日本の他にチベットやインドを舞台にパイと三只眼とともに人間になる方法を探していくものとなっている。
主に三只眼のもたらす不老不死を欲しがる組織や、八雲とパイが人間になるための方法探しに焦点が当てられている。
インド神話が色濃く出てくるので10巻から11巻ではガネーシャやパールバティーなど、FGOユーザーなら聞き馴染みのある名前が出てくるようになる。
中盤からはアクションファンタジー
シヴァとベナレスが本格的に動き始めて以降は、八雲一行とベナレス陣営とのバトルがメインとなる。八雲の獣魔とベナレスの獣魔がぶつかり合う派手なアクションシーンも多く、序盤とは違った雰囲気を楽しめる。
仲間も増えていき、八雲とパイが人間になる話から人類滅亡の話へと物語のスケールが上がっていくのが熱い。
まとめ
物語の完成度が高く、魅力的なキャラが多いため今でもファンが多い作品だ。続編に当たる『3×3 EYES 鬼籍の闇の契約者』は2023年5月まで連載されていたりと、最近まで公式供給があった。そのくらいに根強いファンがついている。私もその一人。
全40巻、文庫版全24巻と長いけれど、興味が出た方は是非八雲とパイの物語を見届けてほしい。
ちなみに、アニメ化やゲーム化されていて八雲役を辻谷耕史さんが、パイ役を林原めぐみさんが演じていらっしゃる。そのため、コマ外に林原めぐみさんの名前がよく出る。2人がデュエットで歌った「Stay」は、八雲とパイの関係性やお互いの気持ちを描いた神曲なので、本編を読んだあとに聴くと特大の尊いを味わえる。