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理屈の通じない怪異が怖いホラー漫画『裏バイト:逃亡禁止』1巻の感想


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怪異が怪異としての真価を発揮するときとはどのようなときか。人間に害を与える理由がおぞましいとき?見た目が恐ろしい?絶対的な能力を持っている?

否、怪異が怪異としての真価を発揮するのは「意味がわからない」ときである。

今回は「意味がわからない」怪異がたくさん登場するマンガ『裏バイト:逃亡禁止』である。

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出典:『裏バイト:逃亡禁止』©田口翔太郎/小学館

広告なんかでよく目にしていてずっと気になっていたマンガのひとつ。1巻をようやく買えたので、感想を書いていこうと思う。極力ネタバレ無しで進めていくので、ネタバレ有りがいい人はブラウザバック推奨。

 

あらすじ

多額の借金を理由に白浜和美と黒嶺ユメは、「裏バイト」と呼ばれる仕事をしていた。「裏バイト」とは、通常よりもはるかに高額な給料が貰えるが、内容は怪異が絡んだ不可解極まりないものであり、命の危機に晒されることも珍しくない仕事である。ユメの特殊能力である「危機を予知すると感じる黒い匂い」を頼りに、白浜と協力しながらと次々に現れる怪異の脅威を躱していく。

1巻収録ストーリー

ホールスタッフ

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出典:『裏バイト:逃亡禁止』©田口翔太郎/小学館

自然豊かな郊外に位置するリゾートレストラン「緑心庵」に白浜とユメは裏バイトとして泊まり込みで採用された。簡単なホール業務のみで時給15000円という破格っぷりに、白浜は裏があると思ってユメに協力関係を申し出る。しかし、ユメは勤務態度が最悪だったために白浜の申し出を断った。

白浜はホールスタッフの裏バイトを始めてから森を散歩中に奇妙な女に出会う夢を見るようになり、最後は誰かに呼ばれて起きるということを繰り返していた。そして、それに伴ってユメは「クサイ」という言葉を連呼していく。バイト開始から1週間が過ぎた頃、夜中に白浜はユメに起こされて「休憩室へ」と言われる。

休憩室に行く途中で白浜は、緑心庵のオーナーの妻がいるという部屋を覗いてしまう。そこにはいたのは…。

「はじめまして。」「はじめまして。」「はじめまして。」「はじめまして。」

感想

初回ということもあって、のちの話よりは温めの怖さ。ただ、意味のわからなさは1話目から発揮されている。私は林の中や森になんとなく怖くて一人で歩くとか苦手なのだが、さらに嫌になった。

ビル警備員

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出典:『裏バイト:逃亡禁止』©田口翔太郎/小学館

白浜とユメは学生時代の同級生だったということで、バディを組んで裏バイトに臨むことになった。黒黒ビルの夜間警備員の裏バイトをすることになった2人は先任の警備員から「7階は念入り見るように」という指示を受ける。しかし、ユメは7階がクサイという。しかし、先任の指示通りにしないとクビになる可能性があると考えた白浜は7階を見に行くことに。

7階の部屋には残業をしている社員たちがいた。社員の一人が後輩に暴力を伴ったパワハラを始めたため、白浜が部屋に入ろうとするとユメに肩を掴まれて止められる。すると、先程まで明るかった7階フロアは真っ暗で、人っ子一人いなくなっていた。そして、ユメは7階の部屋がクサイと震えだした。

一方で、帰宅していった先任の警備員は自宅で首を吊っていた。

「終わらない、終わらない、終わらない…

感想

ハマちゃん(白浜)とユメが正式にバディを組んでからの初裏バイト。夜間警備員の仕事は表(?)の場合でも心霊現象にあったという話をよく聞くので、ホラーの定番職な気がする。

ブラックバイト経験者なので、いろいろな意味で怖かった。終わらないものほど怖いものなんてない。

個人向け配送業

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中身を見てはいけない「鞄」を指定の時間に指定の場所に運んでほしいという依頼を受けた白浜とユメ。「鞄」を運ぶために移動していると、2人は謎の注目を浴びるようになる。ユメは怪訝に思いつつ、白浜は気にしていない様子。そして、なぜか「鞄」に執着を見せる男が現れ、ホテルで寝ている間に盗まれてしまう。驚いた2人が「鞄」を探すために部屋のドアを開けると「鞄」はそこにあったが、盗もうとした男も壁に顔面を擦り付けて息絶えた状態でそばにいた。

「鞄」に不気味さを感じつつも、運んでいると再び盗まれて、犯人は同じように顔面を擦り付けて死んだ。「鞄」の正体とは…。

「見なげれば良がった」

感想

開けてはいけないと言われたものほど開けたくなって、見てはいけないと言われたほど見たくなるのが人間の心理。この「鞄」はそれを表したものなのか。

今回はハマちゃんとユメの地元と、家族について少し触れられていた。2人とも家庭環境は複雑な模様。学生時代のハマちゃんは初だったようで、とても可愛らしい。

ギャグの部分の勢いが強く笑いながら読めるのに、「鞄」の中身を想像すると怖いというギャップが面白かった。

治験

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出典:『裏バイト:逃亡禁止』©田口翔太郎/小学館

1週間で300万の治験裏バイトに参加した白浜とユメの2人は、同じく治験参加者の石見絵里と崎村ゆうの2人と話すようになる。その中で、治験に参加する前後の記憶がないこと、「扉を開けた者には300万の追加報酬がある」という話題になる。怪しさが漂う治験バイトであるため崎村の提案で、なにかあったら協力することが決まった。しかし次の日になると石見の様子が変わり、看護師らしき人間に「扉」を開けたと報告した。その様子を見たユメは「クサッ」と呟く。石見を心配した白浜とユメは黒い匂いを辿り、石見のいる部屋にたどり着く。中を覗くと、ぼんやりと座る石見の口に手をかけてぐいんと大きく開かせている医師の姿があった。口を開けられた石見の体は歪んでいき、やがて医師の手の中に収まってしまった。すると、白浜とユメの中から石見に関する記憶が消えてしまった。「扉」とはなんなのか、「扉」を、開けるとどうなってしまうのか。

「嘘だったんだ」

感想

ハマちゃんたち以外にはじめて裏バイトの人が出てきた。若い人ばかりだけど、やはり金に困っての裏バイトなのか。ユメのような異能やよほど運が良いなどがないと、生き残るのは難しそうだなと思った。今回は怪異らしい怪異は登場しないが、夢や過去、現実が混在した描写が上手で言いようのない不気味さがあった。

もし私が同じ状況下に置かれたとしたら……「扉」を開けてしまうだろうなぁ…。

まとめ

1話完結もしくは長くても3〜4話ほどで1つの話が完結する作りになっていてサクッと読める。絵が少し独特で好き嫌いが分かれそうな感じだが、ストーリーの雰囲気と非常にマッチしているので慣れてくると気にならなくなる。

怪異の描写がうまく、画面に唐突に怪異が現れるビックリ系から結末で重要事実発覚系、考察することでじわじわくる系と多種多様な怪異で楽しませてくれる。

どの怪異も基本的には理不尽極まりないし、いつからなぜどうしてといったことの大半が明かされない。明かされないのが逆に恐怖を煽る構造になっていて、ホラー・オカルトととしての出来がいい。すべてが解明されることでわかる恐怖系も好きなのだが、怪異は意味がわからないまま、あるいはとにかく理不尽であることで人間にはどうしようもできない無力感が好きな人にオススメだと思う。

そして、そんな理不尽で奇々怪々極まりない怪異を利用しようとする人間が出てくるのため、人怖も楽しめちゃう。色んな怖いを味わえるなんてお得すぎる。

あと、合間に挟まれるコメディもストーリーのテンポを崩さないので、邪魔にならない。というか、ないとつまらないかもしれない。ひたすら怖いだけのホラーも好きだが、合間にシュールなコメディが挟まれることでキャラの人間味を感じられるし、ホラーとのギャップになっていてちょうどいい温度感になってる。どんどんシュールなシーンがクセになってくる。

普通なら躱しきれないような怪異たちを「臭い」という謎能力で躱すハマユメコンビのキャラも良い。

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出典:『裏バイト:逃亡禁止』©田口翔太郎/小学館

ハマちゃんは裏バイトをしてるだけあって、メンタルがオリハルコン並みに強靭だ。この強靭なメンタル力で少しはなよなよしやすいユメのメンタルをうまくコントロールできているように思う。また、肝も据わっているからいざというときに行動力があるので、危機的状況にあっても切り抜けられる強さがある。が、怪異に対してはそこそこメンタル削っているような感じもある。ハマちゃんは亡くなっている父親の話がチラホラ出てくるので、今後重要な人物になるのかもしれない。

 

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出典:『裏バイト:逃亡禁止』©田口翔太郎/小学館

ユメは、ハマちゃんに比べると大人しくてメンタルが常識人よりの感じがある。ハマちゃんに振り回されているところがあるが、きちんと自分の意志を持っていて大事な場面ではそれを示せるので好感が持てる。また、怪異に対しては割と冷静なときがあるので、実はハマちゃんよりメンタル強いかもしれない。危ないものは「黒い匂い」で、良いものは「白い匂い」と嗅ぎ分ける能力を持っているが、なんでそんな能力を持っているのかは明かされていない。今後明かされるのか楽しみ。どこがとは言わないがでっかいのも好きなポイント。服装でわかりにくいけど、絶対でっかい。しゅき。