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【ネタバレ有り】謎が残る『セーフティ~小学校に鳴り響く銃声~』の考察

『セーフティ〜小学校に鳴り響く銃声〜』は様々な謎を残したまま結末を迎える。謎の解釈については視聴者に委ねる形となっているため、「スッキリしない」「もやもやする」「意味が分からなかった」といった感想を抱えている人がいると思う。

しかし、映画の各所にはヒントが散りばめられている。そういったヒントを元に考察をしていこう。

意味が分からないで済ますのには、とても勿体ない映画なので、ぜひ読んだあとにもう一度映画を見て欲しい。

あくまでも私の感想込みの考察なので、ここで書かれていることはひとつの可能性であることはとどめておいて欲しい。

 

 

『セーフティ』の考察

ダンという人

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出典:『SAFETY』/Fabrice Joubert

銃撃事件の犯人はダンという、年の離れた弟を持つ普通の青年。一見普通の青年がなぜ銃撃事件を起こし、一人を射殺してしまったのか。

その理由については、映画内で詳細に語られず、断片的な情報しかない。

しかし、ダンが書いたであろうノートや「俺は狂ってないんだ」というセリフなどから、ダンの背景を想像することができる。

ダンのノート

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出典:『SAFETY』/Fabrice Joubert

作中でできたダンのノートには銃を持った男性の絵と共に「HATE MY LIFE(人生なんて大嫌いだ)」と書かれている。

このことから、ダンは人生に生きづらさなどの苦しみを抱えていたことがわかる。そして、右端には「DEAD」と書いてあったりと不穏さに拍車をかけている。

「HATE MY LIFE」の周りにはビッシリと文字が書かれているのだが、筆記体であることと文字が小さ過ぎたために解読はできなかった。

しかし、人生への言葉の周りに書かれていることから、ダンの人生への不満、生きづらさの原因が書いてあるのではと私は思った。

そして、男の持つ銃がそれらが書かれたページを撃っているように見えることから、銃によってダンの抱える苦しみを破壊しようとしたのではないかと感じられた。

実際にアメリカで起きている銃撃事件の犯人の多くは親からの虐待、学校内でのいじめなどで生きづらさを感じていたという。

そして、そういった生きづらさや苦しみが攻撃性として表に現れて、凶行に至るという。

「狂っていない」というセリフの指す意味

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出典:『SAFETY』/Fabrice Joubert

ダンは弟に対して「俺は狂ってないんだ!」と言う。傍から見れば、銃撃事件を起こして一人を射殺しているダンは狂人のように見える。

しかし、ダンはそれを強く否定する。ダン本人は自分が正常だと思っているのかもしれない。

先述の通り、銃撃事件の犯人の多くは家庭内、もしくは学校内での環境が悪いために精神を病み、生きづらさを感じていたという。

ダンが虐待、いじめを受けていたという明確な描写はなかったが、劣悪な環境が原因で精神を病み、異常な言動をしていたとすれば、周りは「ダンがおかしくなった」と言うだろう。ダンは自分が狂ってないことを母親に伝えてほしいと弟に頼んだことから、少なくとも母親からはそういった扱いを受けていたことが伺える。

ダン自身に病んでいる自覚がなければ、周囲の言葉を強く否定するのも頷けるだろう。

このことから、私はダンが自分自身も知らない間に病んでいたということを表していると思った。

自殺を選んだ理由

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出典:『SAFETY』/Fabrice Joubert

ダンの起こした銃撃事件は、ダンの自殺という形で締めくくられる。

なぜ、ダンは自殺したのか。ノートに書いてあったとおり人生が嫌になったからだろう。

実際の学校で起きる銃撃事件の犯人の多くは自殺するという。なぜ彼らが自殺に至るのかはわかっていない。

そうすることでしか、苦しみから逃げ出すことができなかったのかもしれない。ダンも自殺することでしか、苦しみから逃れられなかったのだろう。

先生はダンと知り合いだった?

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出典:『SAFETY』/Fabrice Joubert

先生はダンとその弟が校外へ出たあと、2人の後を追いかけているために、自身も校舎から出る。敷地内の木の近くにいる2人を見て先生は「ダメだ」と言いながら、2人の元へ走る。

一見、弟を助けに行こうとしているように見える。しかし、その後ダンが自殺してしまった姿を見た先生は、絶望したように顔を歪めて膝をつく。

犯人が自殺したのならば、脅威は去ったとして安堵してもおかしくないが、先生の反応は反対のものとなっている。

このことから、先生はダンのことを知っていたのではないだろうか。

ダンに「家に帰れ」と言われた弟は学校から走って家へと帰っていった。このことから、ダンたちの家は学校に近い場所にあると考えられる。

そして、弟が通っているのならば、ダンも過去に通っていたのではないかと思う。

先生は年配なので、ダンが小学生の頃も教師をしていて、交流があった可能性がある。そして、仮にダンがいじめを受けていたのならば、それを大なり小なり知っていたかもしれない。

しかし、ダンが凶行に走ったことから、彼を助けることはできなかったのだろう。今度こそ助けたいという気持ちから先生はダンのもとに走ったと考えると納得ができる。

先生に銃を向けたダン。しかし、先生を撃つことなく、自分を撃ち抜き自殺した。一度は銃を向けたのに撃たなかったことを考えると、ダンも先生のことを覚えており、ダンにとって先生は気にかけてくれていた存在だったのかもしれない。

弟が隠れなかった理由

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出典:『SAFETY』/Fabrice Joubert

先生の指示のもとクラスメイトたちと隠れていた弟。しかし、犯人の姿を見ようと先生がかけてくれたシートから抜け出して、物陰に隠れる。

最初見ると好奇心からくる行動かのように思えるが、弟は「ダンかもしれない」という気持ちがあったのかもしれない。

ダンは弟を逃がしたり、みんなに自分は狂っていないと伝えてほしいと頼んだりしていることから、弟には一定の信頼を起き、兄弟関係は悪くなかったと思われる。

そして、弟は病んでいく兄をそばで見ていて、銃撃事件に至る兆候を感じ取っていたのではないだろうか。弟は映画の冒頭から、どこか心ここにあらずといった様子で、なにかを考えているように見える。

もしかしたら、ダンの様子を気にかけていたのかもしれない。

そして、銃声が聞こえて緊迫した空気が流れる中、犯人がダンかもしれないと思いたち、外の様子を伺うために隠れることをやめたのだと私は思った。

まとめ

私たち日本人が想像するより簡単に銃を購入所持でてきてしまうからこそ、頻繁に起こってしまう銃撃事件。

朝普通に登校していった子どもが被害者になるかもしれないと思うとゾッとする。そして、加害者の背景を思うとなんともいえない後味の悪さを感じる。

もちろん、どんな苦しい過去を背負っていようと加害者が悪くないということはない。どんな理由があっても関係のない人々を傷つけていいということはない。

しかし、加害者になってしまうかもしれない心に傷を負っている人たちに気付いて、助けてあげられる社会が必要だと思わせられる作品だったと思う。

ちなみに、作中で意味ありげに何度も映されたダンの銃についていたアクセサリーは調べても、イマイチ意味がわからなかったので、もしわかることがあれば追記したいと思う。

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